ビタミンE浸透による酸化防止で人工膝関節を長寿命化!!

2012年11月21日

 

バイオメット・ジャパン株式会社(本社:東京都港区芝公園2-11-1)は、 2010年11月に発売した人工股関節の部品であるポリエチレン製ライナーにビタミンEを 浸漬/浸透させる『E1™(イーワン)』テクノロジーを、 2012年11月より人工膝関節のポリエチレン製ベアリングに展開しました。


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近年の患者の低年齢化、および、より活動性の高い術後生活へのニーズに対応するには、 人工膝関節の耐用年数に大きく影響を及ぼす「酸化」への対応が大きな課題となっていました。 本技術は天然抗酸化剤のビタミンEを浸漬/浸透させることによって「持続的な耐酸化機能」を持たせることにより、 人工膝関節のポリエチレン耐久性に不可欠な摩耗と破損を長期的に抑制する技術として期待されています。 「E1™」が導入される次世代の人工膝関節では、 従来、一般的に15年~20年と言われてきた人工膝関節のさらなる長寿命化が期待されます。

人工膝関節のイラスト。
左図真ん中の部分がポリエチレン製のベアリング

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このため、人工膝関節では、耐久性の向上のため、様々な技術の研究開発が進められてきました。 その主なテーマに「摩耗の低減」と「機械的強度の維持」が挙げられます。 このため、近年では、ポリエチレンにγ(ガンマ)線を照射して、 分子結合が強固で摩耗に強いポリエチレン(ハイリークロスリンクポリエチレン:HXLPE)を生成する 技術が取り入れられるようになっています。 

ビタミンEの浸漬/浸透によりやや黄金色がかった色のポリエチレン。

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しかしながら、HXLPEでは、ポリエチレンを架橋結合することにより「摩耗の低減」は実現できますが、 「耐酸化」と「機械的特性の維持」に対応しない限り、 長期的な耐久性は得られないという課題がありました。

「E1™」の技術により、抗酸化物質として知られるビタミンEをポリエチレン(HXLPE)に浸透させておくことで、 繰り返しストレスがかかることで発生する不安定なポリエチレン分子部分に酸素よりも早くビタミンEが反応することで酸化を防止し、 持続的に耐酸化性を持たせるとともに、機械的強度を維持することに成功しました。 「E1™」を導入した人工膝関節のポリエチレンの耐久性テストでは、摩耗粉の産生を87%低減しつつ、 体内と同じく酸素が豊富な環境下での繰り返しの負荷試験においても、計測可能な酸化や亀裂は認められませんでした。

バイオメット・ジャパンでは、本技術の導入により、より幅広い年齢層の方が安心して人工膝関節置換手術を選択できるようになることを期待しています。

<「E1™」技術の詳細>

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①HXLPE(ハイリークロスリンクポリエチレン)の原理

γ線を照射されたポリエチレンは、炭素と水素の結合が一部切断されます。 切断された状態の分子(フリーラジカル)である炭素同士が再結合することで、 ポリエチレンの分子が複雑にからみあうようになり、強固な結合(クロスリンク)を発生させ、 摩耗を低下させます。 切断された状態の分子が酸素と結合すると酸化(ポリエチレンの劣化)になります。

②フリーラジカルの除去

フリーラジカルを除去するためには、熱処理をする必要があります。 フリーラジカルを完全に除去するには、一度熱して融解させる方法(リメルティング)があります。 リメルティングはフリーラジカルを完全に除去することが可能ですが、 機械的強度が低下してしまいます。また、最近では体内の環境下での酸化が確認されています。 一方で、機械的強度を下げない為に融点を超えない程度に熱処理をする方法(アニーリング)という方法も存在しますが、 こちらはフリーラジカルを完全に除去できず、耐酸化性に課題を持ちます。

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③フリーラジカルが酸化の原因に

酸素が豊富に循環する人体の中にHXLPEを長時間置いておくと、 残存したフリーラジカルに体内の酸素が反応し、これが酸化の原因となり、 酸化した部分が脆くなって摩耗や破損につながります。 

酸化が原因で劣化、摩耗したポリエチレン

④ビタミンEの浸漬/浸透による効果

ビタミンE(α-トコフェロール)は食品の酸化防止剤としても広く利用されています。 また、ビタミンEは体内においても抗酸化物質として重要な役割を果たしています。 浸漬/浸透させたビタミンEがHXLPEに含まれていれば、酸素と結合する前にビタミンEが フリーラジカルを捉え、酸化を防ぐことができます。

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ビタミンEを浸漬/浸透させる「E1™」テクノロジーはマサチューセッツジェネラルホスピタル (MGH)がその技術を開発し、バイオメット社との協力により製品化に成功したユニークな技術で、 特殊な方法と条件下でHXLPEをビタミンE溶液に浸すことで、内部まで均一な浸透が可能となります。 他にも、ビタミンEの粉末/液体をポリエチレンの原材料に混ぜ込む方法もありますが、 ポリエチレンの生成過程でビタミンEとの結合が起きてしまうため、 架橋結合(クロスリンク)が阻害され、耐摩耗性に影響する可能性が示唆されています。 「E1™」の技術では、架橋結合した後のポリエチレンにビタミンEを浸漬/浸透させるため、 ビタミンEが架橋結合を阻害することがありません。 

ポリエチレンの内部まで均一にビタミンEが浸透している

<参考資料>

人工膝関節置換手術について

人工膝関節置換手術は、変形性関節症をはじめとする膝の痛みに対する治療のため、膝関節を人工関節に置き換える手術です。近年、人工関節材料の進化や新しい技術の開発などにともない、年々手術件数が増加し、2010年には年間約7万人が手術を受けています。一方で、主な原因疾患である変形性関節症の国内の潜在的な患者数(X線診断による有病者数)は、約2530万人と推定されています。(∗)

∗ 東大病院「22世紀医療センター、平成22年度活動報告書」より

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(メーカー出荷ユニットベース)

出所:(株)矢野経済研究所「2011年版メディカルバイオニクス(人工臓器)市場
の中期予測と参入企業の徹底分析」をもとに「人工関節ライフ」が作成


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